配偶者と親で相続する場合の相続割合について解説

親子

配偶者と親が相続する場合、法定相続分は配偶者が3分の2、親が3分の1です。配偶者の条件は婚姻届を出していることで、事実婚(内縁)の夫・妻は相続人になれません。両親とも健在な場合は親の相続分を父・母が等分します。法定相続分はあくまで目安で、被相続人が遺言書に記した指定相続分のほうが優先されます。

結婚の形によっては相続人になれない

被相続人と配偶者の間に子どもがおらず、かつ親が生きている場合、法定相続分は配偶者が3分の2、親が3分の1となっています。まず、配偶者の様々なパターンについて、死亡した夫の遺産が3,000万円、妻はいるが子どもはおらず、実の両親は2人とも健在というケースで説明します。

結婚生活を共にしている場合

現代社会で最もスタンダードな結婚の形は、婚姻届を提出して法律上の夫婦となり結婚生活を共にする形です。しかし最近では婚姻届を提出しない「事実婚(内縁)」という形も広く知られるようになりました。結婚の形は遺産相続にどのように影響するのでしょうか?

婚姻届を出している配偶者

法定相続人の中で、法律上の夫または妻は常に相続人です。婚姻届を出していることが決め手なので、当然、再婚の場合も配偶者に相続権があります。このため、被相続人の遺産3,000万円は、妻が2,000万円、両親が1,000万円相続することになります。

事実婚(内縁)の夫・妻

事実婚の夫・妻は法定相続人になれません。事実婚でも、離婚の場合は財産分与や慰謝料を請求できるのですが、相続では事情が違います。どれだけ長く連れ添っていても相続人にはなれず、被相続人には配偶者がいないものとして扱われるのです。つまり被相続人の遺産3,000万円はすべて両親が相続します。

離婚後や別居中の場合

結婚生活が順調にいく夫婦もいれば、様々な事情で離婚や別居に至る場合もあります。離婚後の元配偶者には相続権はあるのでしょうか?また、別居中の配偶者はすでに夫婦と言える関係でなくても相続できるのでしょうか?

離婚した元配偶者

相続の場合の配偶者は「婚姻届を出しているかどうか」が判断基準なので、離婚すれば元配偶者は相続人にはなれません。このため、被相続人の遺産3,000万円はすべて両親が相続することになります。

離婚寸前や別居中の配偶者

一方、夫婦関係が修復不可能で離婚の話し合いの真っ最中、あるいは何十年も別居状態にあっても、相続開始時に戸籍上で夫婦の関係なら配偶者には相続権があります。夫婦の仲の良さや生活の実態は相続にはまったく関係ないのです。被相続人の遺産3,000万円は、妻が2,000万円、両親が1,000万円を相続します。

両親とも健在、片親… 親にも様々なパターンあり

ここまで配偶者の様々なパターンを紹介しましたが、両親のパターンも一つではありません。死亡した夫の遺産が3,000万円、妻と夫の親が相続人となるケースで説明していきます。

両親が健在の場合

戸籍上の配偶者は常に相続人ですが、親・子・兄弟といった血族相続人には順位があります。第1順位は子どもで、父母などの直系尊属は子どもに次ぐ第2順位です。まず両親が健在の場合を説明します。

両親ともに健在

まず配偶者と親で遺産を分け、親の相続分は遺産全体の3分の1となります。ここで被相続人の父・母がともに健在なら、遺産をそれぞれに分ける必要があります。血族相続人は同じ順位に複数の相続人がいれば均等に分けることになっています。つまり今回のケースでは、被相続人の遺産3,000万円は、配偶者が2,000万円、父親が500万円、母親が500万円を相続します。

片親だけが健在

被相続人の両親のどちらかはすでに他界して片親だけが健在、という家族も珍しくありません。当たり前ですが亡くなった人は遺産を受け取れないので、親の相続分は健在の親が1人で受け取ることになります。このため今回のケースで母親が他界しているとすれば、被相続人の遺産3,000万円は、配偶者が2,000万円、父親が1,000万円を相続するのです。

両親が死亡していて、祖父母が健在の場合

一方、両親ともすでに他界して、その代わりに被相続人の祖父母が健在という場合もあります。血族相続人の第2順位の「直系尊属」には祖父母も含まれていて、父母がともにいない場合は「代襲相続」が行われます。

祖父母に相続権がある

相続人となるべき人が死亡や何らかの事情で相続人になれない場合、代わりに相続する人を代襲相続人と言います。被相続人の両親が死亡している場合は祖父母が代襲相続人です。法定相続分は父母の時と同じなので、被相続人の遺産3,000万円は、配偶者が2,000万円、祖父母が1,000万円を相続することになります。

父方・母方ともに健在

祖父母は父方・母方の両方に存在します。もし全員が健在の場合、被相続人1人に対して最大で4人の祖父母が存在するのです。仮に祖父母が4人とも健在なら、被相続人の遺産3,000万円は、配偶者が2,000万円相続し、父方の祖父・父方の祖母・母方の祖父・母方の祖母が1人250万円ずつ相続します。

遺産の分け方を指定したいなら遺言の活用を

遺産分割でもめるのは資産が多いお金持ちの話、と考えていませんか?しかし実際は一般的な家庭で相続をめぐって親族内の対立が泥沼化するケースは意外にも多いのです。民法の法定相続人の規定を正しく理解し、必要に応じて養子縁組や遺言を活用しましょう。

こんな場合はどうなる?

婚姻関係が変化すると相続にも影響が及びます。被相続人に子どもがいない場合、被相続人の親の離婚・再婚の余波で、思わぬ人が相続人になるかもしれません。このほか、兄弟姉妹が相続に口を出しトラブルになる場合もあります。

「育ての親」に相続権はある?

被相続人が幼い頃に両親が離婚して父親に引き取られ、その後父親の再婚で新しい母に育てられた場合、「育ての親」に相続権はあるのでしょうか?これは養子縁組の有無で決まります。養子縁組をしていれば法的な親子関係がありますが、していなければ本当の親子のように仲が良くても相続人にはなれません。逆に生みの母は、親の離婚で疎遠になっていても親子だという事実は変わらないので、相続人になれるのです。

兄弟姉妹がいると起きるトラブル

相続でよくトラブルが起こる例は、被相続人に子どもがいない場合、兄弟姉妹が「自分も相続できるのではないか」と期待してしまうことです。しかし血族相続人の中で兄弟姉妹の順位は、第1順位の子、第2順位の直系尊属に次ぐ、「第3順位」です。兄弟姉妹が相続できるのは、上位の相続人がいないか、相続を放棄した場合に限られます。

遺言書の活用

ここまで法定相続分について説明してきましたが、法定相続分はあくまで目安であり、絶対に守らなければならないものではありません。被相続人の意思に沿って相続したい場合は、遺言書を残しておくのが良いでしょう。

遺言書の内容は法定相続分より優先される

被相続人が遺言書の中で指定した財産の取り分は「指定相続分」と言い、指定相続分は法定相続分よりも優先されます。「法定相続人は配偶者と親だが、遺産は全て配偶者に渡したい」という場合は、その旨を遺言に書いておけばいいのです。ただし遺言書の作成には厳密なルールがあり、形式などに不備があれば無効となるので注意が必要です。

遺留分に注意

しかし、気をつけたいのは「遺留分」です。前項で挙げた例のように、遺言書を作って遺産は全て妻に相続させるつもりでも、被相続人の親には遺留分という「最低限の取り分」が保証されているのです。配偶者と親(直系尊属)が相続人の場合、親の遺留分は遺産全体の6分の1です。配偶者は遺留分を請求されたら支払う必要があります。遺言書の指定相続分は、遺族が遺留分をめぐってもめないよう配慮しておくべきでしょう。

配偶者と親で分ける場合にはいろいろなパターンがあります。配偶者と親の関係があまり良くない、あるいは疎遠だという場合は、いざという時にトラブルに発展すると双方が疲弊してしまいます。遺言書や生前贈与など早めに対策しておきたい方は、遺産相続に強い弁護士に相談してみてはいかがでしょうか?

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