広大地とは?2018年の税制改正で廃止「広大地評価」のルールを解説

広大地

「広大地評価」は2018年の税制改正により廃止されました。この記事では2017年以前に行われた贈与・相続を対象に適用される「広大地評価」を解説しています。
2018年1月1日以降の広い土地の相続・贈与に適用される「地積規模の大きな宅地の評価」について、詳しくは下記の記事をご参照ください。

広大地とは

広大地とは、地域の標準的な宅地より著しく広大な宅地で、かつ開発行為を行う場合に公共公益的施設用地の負担が必要な土地です。大規模工場用地やマンション適地は広大地に含まれません。広大地に該当すれば評価額が大幅に下がります。地主の相続税対策として主流のアパート建築よりも手軽に高い効果を得られる可能性があります。

「広大地」とは文字どおり広い土地のことです、しかし「○○平方メートル以上なら広大地」というように面積だけで判定されるものではありません。その土地がある地域内での相対的な広さに着目し、さらに開発を行った場合を想定して見極めます。

要件1:地域の標準的な宅地より著しく広大な宅地

国税庁のホームページによると、広大地の1つ目の要件は「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地」であることです。「その地域」や「著しく広大」という表現は具体的に何を指すのでしょうか?

「その地域」とは行政区域だけではない

一般的に地域というと市区町村といった行政区域を思い浮かべます。しかし広大地の「その地域」は、行政区域だけでなく、評価対象地の周辺について様々な条件を総合的に勘案して「ひとまとまり」と考えられる地域を指します。その条件とは、例えば自然の状況です。地域の概念は川や山などで区切られていることがよくあります。また、道路・鉄道・公園などもで地域が分かれます。

「著しく広大」の基準は土地がある場所で異なる

次に、面積の目安についてです。国税庁のホームページでは、「著しく広大」とは評価対象地が各自治体の開発許可面積基準以上の場合、という見解を示しています。つまりその土地がある場所によって基準が異なるのです。面積基準は以下の通りです。

広大地の面積基準
市街化区域 (都市計画法における、市街地として積極的に整備する区域) 三大都市圏: 500平方メートル
それ以外の地域 : 1,000平方メートル
非線引き都市計画区域(市街化区域でも市街化調整区域でもない区域)及び準都市計画区域 (都市計画区域外で土地利用規制のために指定される区域) 3,000平方メートル
非線引き都市計画区域及び準都市計画区域のうち、用途地域が定められている区域  市街化区域に準じた面積

要件2:開発行為を行う場合に公共公益的施設用地の負担が必要

広大地と認められる2つ目の要件は「都市計画法の開発行為を行う場合に公共公益的施設用地の負担が必要」という点です。「公共公益施設用地」は土地の評価額が下がることに大きく関係しています。

広大地には道路などの「つぶれ地」が必要

都市計画法に基づいて広い土地を戸建住宅分譲用地として開発する場合、その土地の中に道路や公園が必要になります。これらの用地を公共公益施設用地と言います。公共公益施設用地のような「つぶれ地」があると、宅地として活用できる面積が減ってしまうため、広大地は土地の評価額が下がるのです。

広大地に該当しない土地もある

土地が広大地と判定されるためには、ここまでに挙げた2つの要件を備えている必要があります。ただし、大規模工場用地やマンション適地は広大地としては認められません。

相続した土地は広大地は?判定フローチャート

相続した土地が広大地に該当するかどうかを正確に知るには、専門知識や経験が豊富な不動産鑑定に相談する必要があります。専門家に依頼する前に、次のフローチャートを使えば簡易チェックが可能です。

大規模工場用地・マンション適地は広大地ではない

広大地を土地の使用目的の観点から言い表すと「戸建分譲を行えば最も有効に使える土地」となります。このため、大規模工場用地や、マンションを建てたほうが有効だと考えられる土地は広大地に該当しません。

【Q1】大規模工場用地に該当するか?
→「YES」の場合…広大地に該当しない
→「NO」の場合…Q2に進む

大規模工場用地には明確な定義があります。土地面積が50,000平方メートル以上で、路線価地域においては大工場地区に区分されている土地です。大規模工場用地のように周りに大きな工場が集まっている場合、一部の土地だけ分譲地となり住宅が建つことは一般的ではありません。このため、大規模工場用地は広大地に該当しません。

【Q2】マンション適地に該当するか?
→「YES」の場合…広大地に該当しない
→「NO」の場合…Q3に進む

その土地を最も有効に使う方法が戸建分譲より中高層マンション(地上3階建て以上のアパート・マンション)だという場合も、広大地ではありません。その理由は、マンションなら区域内道路などのつぶれ地が生じないため、広大地に認定して価値を下げる必要がないからです。マンション適地かどうかの判断は、駅からの距離や周辺地域の動向、景気などにも左右されます。

標準的な宅地より広く、つぶれ地が生まれるなら広大地

相続した土地が、大規模工場用地でもマンション適地でもない場合、次に考えるのが面積やつぶれ地の条件です。標準的な宅地より広くつぶれ地が生まれるなら、その土地は「広大地」の可能性があります。

【Q3】その地域の標準的な宅地の面積と比べて著しく広大か?
→「YES」の場合…Q4に進む
→「NO」の場合…広大地に該当しない

面積基準は前章で述べた通りですが、まずは500平方メートル以上の土地があれば広大地評価を検討してみるべきでしょう。

【Q4】開発で道路などのつぶれ地が発生するか?
→「YES」の場合…広大地に該当する可能性あり
→「NO」の場合…広大地に該当しない

戸建分譲の場合は区域内道路を整備する必要があり、つぶれ地となります。土地の形や道路との位置関係によっては区域内道路を整備する必要がなく、広大地に該当しません。また、つぶれ地がごみ集積所など小さな施設だけの場合も広大地と認められません。

フローチャートによる判定はあくまで目安であり、不動産鑑定士などの専門家が行う実際の判断とは異なる場合があります。

広大地の活用で相続税を賢く節約する

広大地に該当した場合、評価額はどれくらい下がるのでしょうか?また、広い土地がある場合はアパートを建築したり、生前贈与の相続時精算課税制度を活用するという手もあります。相続税を賢く節約するにはどんな点に注意すればいいのでしょうか?

広大地だと評価額はどれくらい下がる?

広大地の評価額は、次の計算式で求めます。

路線価×広大地補正率×土地の面積=評価額
(広大地補正率は0.6-0.05×(広大地の面積÷1000平方メートル)

仮に、路線価が10万円の土地を1200平方メートル持っている場合について、広大地に該当しない場合とする場合を比較してみましょう。

【計算例1】広大地に該当しない場合

まずは広大地に該当しなかったとして、路線価方式で評価額を求めます。土地の形状による補正は考慮していません。

路線価10万円×土地1200平方メートル=1億2000万円

【計算例2】広大地に該当する場合

次に、広大地に該当した場合の評価額を求めます。

路線価10万円×補正率{0.6-0.05×(土地1200平方メートル÷1000平方メートル)=0.54}×1200平方メートル=6480万円

路線価方式の評価額と比較すると
1億2000万円 - 6480万円 = 5520万円

広大地に該当すれば、評価額が5520万円も下がることになるのです。

広大地をさらに賢く活用するには?

相続で財産の評価額を下げる、あるいは相続税の控除を受ける手法は様々です。広大地の適用を検討する場合、その他の手法と比較したり併用することでさらに大きな節税効果が期待できます。

アパート建築と広大地、どちらがお得?

相続した遊休地などにアパートやマンションを建てると、土地が宅地から「貸家建付地」になり評価額が下がります。地主の相続税対策としてよくある手法です。しかし空室が出て思うように家賃収入が得られなければ、建築費のために借りたお金を計画通りに返済できなくなるリスクも伴います。もし広大地に該当すれば、アパートやマンションを建てるよりも手軽に、高い節税効果が得られます。

広大地評価は景気に左右される

広大地に該当するかどうかは、評価時の景気にも左右されます。景気が悪く土地が安い時期の不動産開発は、戸建分譲のほうが優勢です。つまり広大地と評価される可能性が上がります。逆に景気が上向きになり土地が高くなれば、より高い収益率が見込めるマンションとして開発する傾向が強まります。広大地と評価される可能性は下がります。

広大地と評価されるうちに生前贈与する

この流れをうまく活用すれば、被相続人の存命中に広大地評価を確定させ、評価額を下げた状態で相続時精算課税制度を活用して生前贈与を行う、という節税対策が可能です。相続時精算課税制度は2500万円以内なら贈与税がかからず、それを超えても税率は20%と一定です。広大地評価との合わせ技で賢く節税できます。

広大地の評価は専門家によっても見解が分かれます。もし広大地に詳しくない専門家に依頼してしまったら、多額の相続税に苦しむ羽目になるかもしれません。「うちの土地は広大地かもしれない」と思ったら、早めに遺産相続に強い専門家に相談してみてください。

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