生前分与とは?生きているうちに相続を検討しておきましょう
自分の財産を譲渡する方法としては、生前にできるものと死後にできるものがあります。生前対策については、早い段階から毎年少しずつ財産分与を進めましょう。また、死後にできるものについては、元気なうちにきちんとした形式に則った遺言を残すなど生前から準備を進めておくことが大切です。
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財産分与に希望があるなら、生前相続対策を
自分の死後、遺産分割の仕方を決めなければ、法律に従ったやり方になってしまいます。しかし、分割の仕方をあらかじめ指定すればその通りに分割することも可能なので、「この財産はこの人に」などと指定したい場合は遺言に残しておくことが重要です。
原則は法定相続
被相続人が亡くなると、その瞬間から否が応でも遺産相続手続きが始まります。遺産の分割方法について故人が何も指定しなければ、原則として民法に規定されている方法に従って遺産分割が行われることとなります。これを「法定相続」と言います。
法定相続分って?
民法では、相続人が複数いるときのそれぞれの取り分について基準を定めています。これを「法定相続分」と言いますが、法定相続分は相続人の構成により異なります。代表的なケースを例に考えてみましょう。
配偶者と子の場合 | 配偶者が1/2、子が1/2となります。子が複数いれば、1/2を子の人数で分けます。 |
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配偶者と直系尊属の場合 | 配偶者が2/3、直系尊属が1/3となります。直系尊属が複数いれば、1/3をその人数で割ることになります。 |
配偶者と兄弟姉妹の場合 | 配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4となります。兄弟姉妹が複数いれば1/4をその人数で分割します。 |
配偶者のみ、血縁相続人のみの場合 | 遺産全額が取り分となります。子のみの場合、兄弟姉妹のみの場合は、複数いればその人数で割ります。 |
必ずしも法定相続分どおりにする必要はない
法定相続分は民法上定められているひとつの基準にすぎません。共同相続人の協議で各自の相続分を決めることもできます。また、被相続人の希望があればその方法で分割することも可能です。
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生前分与で遺言により指定相続分を優先させることができる
財産分与の仕方は本来、被相続人が自由に決められるものです。そのため、遺言を残すことにより、被相続人の意思が法律に優先されることになります。
相続分の指定は一部の相続人だけでも可
相続分の指定は、相続人全員に対して行うことも一部の相続人に対して行うこともできます。指定相続分は法定相続分に優先するため、被相続人が指定した各自の取り分が法定相続分と異なる割合になっても問題はありません。
遺留分に注意
ただし、各相続人には最低限の取り分である「遺留分」が留保されているため、被相続人でもこの遺留分を侵すような分割はできません。遺留分を超えた遺産分割をすると、親族間の争いの元になる可能性もあります。
死後に行う相続財産の移転方法とは
財産の移転方法は、被相続人の生前にできるものと死後に行うものの2通りの方法があります。ではまず、被相続人の死後にできる財産移転の方法はについて考えていきましょう。
遺産相続
生前に特に何もせずにいると、自動的に法律で定められた親族(法定相続人)に財産が移転します。この場合、譲渡された財産に相続税が発生すると、その財産を相続した人が納税することになります。
遺産相続での財産の分割方法って?
通常行われる、遺産相続で財産を分割する方法は次の4つです。
現物分割 | 現金や土地など、手元にある遺産をそのまま分割する方法です。 |
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換価分割 | 土地や建物などの不動産を売却してお金に変える方法です。 |
代償分割 | 土地を相続した人が、他の相続人に対し取り分を現金で支払う方法です。 |
共有分割 | 各相続人の持ち分を決めておいて、みんなで共有する方法です。 |
円満に遺産分割協議を進めるためにはどうすればいい?
遺産分割協議をスムーズに進めるためには、民法で決められた法定相続分はできる限り守るほうがよいでしょう。
また、相続人間で多少相続する額に差があっても、目を瞑ることも必要となるかもしれません。お互いが気持ち良く協議を終えることができるよう、歩み寄ることが大切です。
協議がまとまらないときは家庭裁判所での調停・審判へ
もし、遺産分割協議がもつれ、泥沼になりそうなときは家庭裁判所での調停を活用しましょう。まず調停の申立てをした上で調停人の立ち会いのもとで協議を行い、協議がととのえば判決と同じ効力を持つ調停調書が作成されて終了となります。協議がととのわなければ審判に移行します。
遺贈する
法定相続人以外の人に相続させたい場合は、遺言書を残すことで財産を渡すことができます。これを「遺贈(いぞう)」といいます。この場合、受け取る相手の了解を事前に取っておく必要はありません。財産を持つ人が、自分の気持ちの反映として贈るものです。
「包括遺贈」と「特定遺贈」
遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」の2通りがあります。「包括遺贈」とは全財産に対して贈与する割合を提示して行うものであり、「特定遺贈」とは特定の財産を提示して行うものです。また、両方とも遺贈を受けたくなければ放棄することが可能です。
遺贈を行うときは
ただし、遺贈を行うためには決められた形式に則った遺言書が必要です。そのため、遺贈をスムーズに進めたければ、できる限り公正証書遺言を作成するほうがよいでしょう。また、いくら故人の遺志で財産分与ができると言っても、相続人への遺留分を侵すような遺贈はできないため注意が必要です。
生前分与は大事!生前にできる財産の移転方法とは
では、今度は生前にできる財産の移転方法について考えてみましょう。生前にできる方法としては、「生前贈与」と「売買」の方法があります。
生前贈与
自分が生きている間に自分の財産を相続人などに分け与えることを生前贈与と言い、相続税対策の中で最もお手軽かつ効果の高い方法といわれています。贈与にも贈与税がかかりますが、できるだけ贈与税がかからない方法で贈与を進めることがポイントです。
財産を小分けに、できる限り多くの人に繰り返し行うのがコツ
年間110万円までなら贈与税がかからないため、財産を効率的に減らすためには、毎年いろんな人に少しずつ贈与するのがコツです。少額の贈与でも大きな節税効果が得られるのがメリットとなっています。ただ、贈与税を多少払ってでも贈与を手早く行ったほうがよいケースもあり、節税効果はケースバイケースです。
「一代飛び越し贈与」もひとつの方法
一般的に、財産は親→子→孫へと相続するものですが、相続税対策のひとつとして親から孫へ一足飛びに贈与する方法があります。これを「一代飛び越し贈与」と言います。孫に直接贈与すれば、相続税を1回分節約することも可能です。また、通常相続開始前3年間に行われた贈与には贈与税がかかるものですが、孫は相続人ではないためこのルールも適用されません。
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売買
長く使っていない土地や建物がある場合。また、不動産を持っていても納税資金に不安がある場合は、相続税対策として不動産を売却して現金化しておく方法があります。
不動産を売却すると色々なメリットが
維持・管理が難しくなった不動産や誰も使用していない不動産は、持っていても固定資産税がかかるだけでその持ち主にとってメリットはありません。そのような土地は思い切って手放し、現金にしておくことも相続税を節税するひとつの方法です。また、不動産を現金化することで遺産相続もやりやすくなるメリットもあります。
祭祀財産の購入
墓地・墓石・仏壇など、日常の礼拝に使用するものを「祭祀財産」と言います。死後に必要となるこれらの祭祀財産には相続税がかからないため、節税対策になります。また、事前に購入することで財産を減らすことも可能です。
相続を「争族」としないためには、元気なうちに自分の財産を誰にどのような形で譲渡するかを決めておくことが非常に重要です。また、事前に準備をしておくことで高い節税効果も得られます。スムーズに遺産を分割できてなおかつ相続税もおさえるためには、遺産相続に強い弁護士に相談しながら、元気なうちに相続に向けた準備を進めましょう。
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