遺産相続の時に相続税控除の恩恵を受けられるのはどんな人?

相続税控除

相続税の計算をして最終的に各相続人が納付すべき相続税額を算出する際に、税額控除が利用できるケースがあります。このような控除を利用すればある程度相続税を減らすことが可能です。具体的に誰がどの制度を利用すると節税効果が高いのかについては、遺産相続に強い弁護士にアドバイスをもらうとよいでしょう。

納付すべき相続税額の計算方法を知っておこう

相続税は、一部相続財産の対象外となるものを除き、被相続人から譲り受けた財産すべてについてかかる税金のことです。相続税を計算するには、まず遺された財産の評価額を算出するところからスタートします。

相続財産を金銭的に評価するところからスタート

相続税額を算出するためには、まず各人が相続したあらゆる財産について金銭的に評価した上で課税価格を出さなければなりません。ここで言う「財産」とはプラスの財産もマイナスの財産も含みます。

財産を取得した人ごとに計算

相続税の課税価格は財産を取得した人全員について一人ひとり計算していきます。ここでいう「財産を取得した人」とは、相続人に限らず財産の一部を遺贈された第三者も含みます。遺産分割が済んでいないときは法定相続分を相続したものとして計算します。

債務と葬式費用は差し引くことができる

相続人は原則としてプラスの遺産だけではなく、借金などのマイナスの遺産も相続します。課税価格を算出するときは、借金などの債務や葬式費用については差し引いて計算することが可能です。しかし、保証債務については控除できないので注意しましょう。

相続税の総額の計算をする

次に、課税される財産に全体にかかる相続税の計算をしますが、ここで重要となるのが「基礎控除」です。平成27年の相続税法改正で、相続税の基礎控除額が大幅に減額となったことに留意する必要があります。

基礎控除分を差し引く

相続税の課税価格を算出したら、そこから基礎控除分を差し引きます。平成27年1月1日より、基礎控除額は以下の計算式で算出します。

3000万円+600万円×法定相続人の数

平成26年以前は5000万円+1000万円×法定相続人の数だったので、大幅に基礎控除額が引き下げられたことになり、それに伴い相続税の課税対象となる人も増加しました。特に、大都市圏にある土地を相続した人が課税対象になるケースが特に増加したのではないかと推測されています。

相続税の総額を計算

あらゆる財産の評価額から基礎控除額を引いて出した課税遺産総額を、各相続人に法定相続分に応じて平等に振り分けた金額に税率を掛けてそれぞれの税額を算出します。それぞれの計算結果を合計すると、相続税の総額となります。

相続税が控除できるケースとは

算出した相続税から、各相続人の属性に応じて控除が適用されるケースがあります。それぞれどのような控除があるのでしょうか。

配偶者控除は税額が大幅に軽減される

配偶者が被相続人の財産形成に寄与したことを評価したり、被相続人の死後の生活を保障することを目的として配偶者控除制度が作られました。この制度は、配偶者を優遇するために相続税が大幅に軽減される制度となっています。

具体的な配偶者控除額とは

配偶者が取得した財産額のうち、配偶者の法定相続分の相当額もしくは1億6000万円のどちらか多いほうの金額までは相続税が控除されます。ただし、実際に遺産分割が済んでいない場合はこの控除が適用されなくなるため注意が必要です。

配偶者の軽減税額の計算方法とは

実際に軽減される税額は以下の計算式で算出します。

相続税の総額×(a)と(b)のうち、少ないほうの額 / 課税価格の合計額=軽減される税額
(a) 課税価格の合計額×配偶者の法定相続分(1億6000万円未満のときは1億6000万円)
(b) 配偶者の課税価格

その他、相続人が受けられる控除とは

配偶者控除の他に、相続人が利用できる控除制度は以下のようなものがあります。それぞれどのような人が対象になるのか、またどれくらい税額が控除されるのかについてみていきましょう。

未成年控除

相続人が未成年者の場合は、20歳になるまでの年数×10万円が控除されます。平成26年以前は20歳になるまでの年数×6万円でしたが、平成27年に改正された相続税法で改定されました。ただし、過去にも別の相続で未成年者控除を受けている場合は、控除額が軽減される可能性もあります。

障害者控除

相続人が障害者の場合は、その人が85歳までの年数×10万円が、特別障害者の場合は85歳までの年数×20万円が控除されます。こちらも平成26年以前は85歳までの年数×6万円(特別障害者の場合は12万円)でしたが、平成27年の相続税法改正により控除額が増額されることとなりました。ただし、この場合も過去に別の相続で障害者控除を受けていると、控除額が軽減される可能性があるので注意しましょう。

相次相続控除

過去10年以内に2回以上の相続があった場合、1回目に支払った相続税の一部が控除されます。たとえば、父が死亡して10年以内に母親が死亡した場合などが該当します。

外国税控除

外国にある財産を相続などで取得して、外国で相続税に相当する税金を納めた場合は、税金の二重課税を防ぐために一定額が控除できるようになっています。控除額は次のA・Bのどちらか少ない方です。

A:外国で課税された額
B:相続税の額×(海外にある財産の額÷相続人の相続財産の額)

暦年課税分の贈与税額控除

相続を開始する3年以内に贈与された贈与財産には相続税がかかります。しかし、そうすると贈与税と相続税を二重に課税されることになるため、すでに支払い済みの贈与税は控除されます。

相続時精算課税分の贈与税控除

生前にできる相続税の節税対策として非常に有効なのが、相続時精算課税制度です。この制度を利用すれば、被相続人にとっては自分の意思で相続させたい相手に財産を贈与することができるため、死後の「争族」対策にも役立ちます。

相続時精算課税制度って何?

相続時精算課税制度は子や孫に多くの財産を譲り渡すことができる大型の控除制度です。平成26年までは20歳以上の子が対象でしたが、相続税法改正後の平成27年より20歳以上の孫にも適用できるようになりました。

相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度とは、生前に贈与を受けていた財産について相続時に贈与税を控除する制度です。相続時に相続税と贈与税を精算する制度にすることで、高年齢層の所有する財産を生前のうちに若い世代へ多く移転させることを目的としています。

2500万円まで非課税で贈与できる

この制度の最大の特徴は、2500万円まで非課税で贈与できることです。一度に2500万円の贈与をしなくても、複数年にわたり少しずつ贈与して累計で2500万円になるまで贈与税がかかることなく贈与することが可能です。しかし、この制度を利用すると、暦年課税制度は利用できなくなることに留意する必要があります。

暦年課税制度との違いとは

メリットが大きいように見える相続時精算課税制度ですが、暦年課税制度を選んだほうがよいケースもあります。両者の違いはどこにあるのでしょうか。

控除額は相続時精算課税の方が大きい

暦年課税制度の場合、受贈者一人当たり年間110万円を超えると贈与税がかかりますが、相続時精算課税制度を利用すれば、一度に2500万円まで非課税で贈与することができます。一度にたくさんの財産を贈与したいときには、相続時精算課税制度のほうがメリットはあると言えるでしょう。

節税効果は暦年課税の方が上

ただし、相続時精算課税制度は相続税とは切っても切れない関係にあります。生前に多くの財産を贈与しても、相続時には贈与された財産もすべて相続税の対象となります。一方、暦年課税制度の場合は、贈与した分だけ相続財産を減らすことが可能であり、年間で110万円しか非課税で贈与できなくても毎年多くの人に贈与すればその分大幅な節税効果が見込めます。

これらの控除制度を駆使すれば、大幅な税額控除の恩恵を受けることが可能です。しかし、どの制度を利用すれば最も節税効果が高いのかについては素人ではわかりにくいため、被相続人が存命のうちに遺産相続に強い弁護士などの専門家に相談しておきましょう。

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