へそくりや子供名義の預貯金を相続する場合のポイント

へそくり

被相続人が贈与のつもり子供名義で積み立てていた預貯金や、専業主婦が夫の収入から自分名義の口座に蓄えていた預貯金は、条件によっては相続財産とみなされる場合があります。節税のためには生前贈与が有効で、基礎控除額の範囲内で数年に分けて受け取ったり、へそくりではなくお小遣いとして受け取り、贈与税を申告します。

預貯金の相続

あなたは家族がどの金融機関にどれくらいの預貯金を持っているか、把握していますか?口座の名義人が亡くなっても、預けていたお金が自動的に妻や配偶者に振り込まれるわけではありません。預貯金の相続はどのように相続し、相続税の評価額はどのように決まるのでしょうか。

相続には名義変更が必要

被相続人(=亡くなった人)の預貯金の相続の際には、金融機関の口座の名義変更が必要ですが、相続人が多いと手続きには時間がかかります。例えば夫が亡くなり配偶者である妻が「預貯金を自分の名義に変更したい」と考えたとき、子どもなど他の相続人の協力が必要です。

金融機関の口座の名義変更

全国銀行協会によると、遺産分割協議書がある場合の預金の相続手続きには、以下のような書類が必要です。

  • 遺産分割協議書
  • 被相続人の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡まで)
  • 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
  • 相続人全員の印鑑証明書

法定相続分を先に受け取れるか?

遺族の間で遺産分割の結論が出るまでには時間がかかる場合があります。その場合、話し合いの決着を待たずに、個別の法定相続分を受け取ることはできるのでしょうか?

これは金融機関ごとに対応が分かれますが、相続人のトラブルに巻き込まれないよう応じてもらえないことが多いです。
ただし、2018年の相続法改正により、遺産分割前でも相続預貯金の払い戻しを受けられるようになりました。

払い戻しできるのは法定相続分全額ではなく一部ですが、葬儀費用や葬儀後の生活、手続きにかかる費用に使うお金は確保することができます。

預貯金の評価額

遺産相続では、被相続人が亡くなった日を相続開始の日と考えます。そして被相続人の名義の預貯金は、相続開始の預入残高が相続税の評価額となりますが、普通預金と定期預金で少し違いがあります。

普通預金の評価額

普通預金の評価額は、原則として相続開始の日の残高です。残高が少額で、既経過利息(相続開始の日に解約して換金していた場合の利息)も少額の場合は、そのまま評価額となります。

定期預金の評価額

定期預金の場合は利息の計算をしなければなりません。まず既経過利息を預入残高に加えます。しかし、既経過利息には源泉所得税が課税されているため、利息からその分を差し引いて計算します。計算式は次のようになります。

相続開始日の預入残高+(既経過利息-源泉所得税)=評価額

名義預金やへそくりも相続財産とみなされることがある

被相続人が残した預貯金の中には、本人が良かれと思って用意した名義預金や、本人に内緒で形成された家族名義の財産が相続税の課税対象となる場合があります。気づいて後で後悔しないよう、ポイントをおさえておきましょう。

名義預金

名義預金とは、被相続人が配偶者や子どもの名前で口座を開設している預貯金のことです。親が子どもに財産を残してあげようと、本人には内緒で子供名義でお金を積み立てているというケースは少なくありません。

生前贈与と認められない場合

生前贈与のつもりでも、被相続人と同じ印鑑を使用していたり、被相続人が印鑑や通帳を保管していれば生前贈与と認められません。これらのケースでは「当該口座は誰が開設したのか」という点が税務署から問題視されます。また、たとえ被相続人と口約束で贈与の約束を交わしていても、「贈与契約書」が残っていなければ贈与と認められない場合があります。

税務調査で「申告漏れ」とされる可能性も

もし名義預金があり、それを相続財産として申告しないと、税務調査で「申告漏れ」と指摘されます。そうなれば相続財産に加えて相続税が課税されるだけでなく、追徴課税や延滞税が課税されることになるのです。くれぐれも注意しましょう。

へそくり

家事や子育てに専念してきた専業主婦の中には、夫の収入をもとに家計をやりくりして、自分だけの貯蓄、いわゆる「へそくり」を作っている場合があります。意外なことに、へそくりも相続とみなされる場合があるのです。

へそくりは誰の財産?

なぜへそくりは相続とされるのでしょうか?これは、法律上、財産の持ち主と口座の名義は必ずしも一致しないと考えられているからです。妻のへそくりは、通常は妻の名義で作った口座にあります。しかし専業主婦は家庭外で収入を得ておらず、元はと言えば夫の収入で得たお金なので、日本の法律上は夫の財産とみなされるのです。

お小遣いとして受け取るほうが賢明

相続の観点から考えると、夫に内緒でへそくりを作るよりも、お小遣いとして受け取って使っていくおくほうが賢明です。その際、贈与契約書を作成し、振込や家計簿などでお金の移動の記録を残しておきます。そして贈与税の申告も行いますが、年間の贈与額が基礎控除の範囲内なら贈与税もかかりません。

預貯金の相続の際の対策

では、預貯金を相続で税金面での損や生活上の不都合を回避したければ、どんな対策をすればいいのでしょうか。これには大きく分けて2つの観点があります。一つは、名義変更を行うまでの下準備です。もう一つは、財産を持つ人が存命中に行う生前贈与です。

名義変更を行うまでの下準備

「相続問題は早急に解決したいから、すぐに被相続人の預貯金口座の名義変更をしたい」と考える方もいるかもしれませんが、焦りは禁物です。名義変更までにやっておくべき下準備があるのです。

口座凍結に注意

家族が亡くなった時、すぐに金融機関に相続の相談をするのはやめましょう。なぜなら金融機関は口座名義人が亡くなったことを知ると口座を凍結するからです。凍結後はお金の引き出しや公共料金・クレジットカードの引き落とし等ができなくなり、生前に生活費の口座として利用していた場合は、その後の家計のやりくりや支払いに支障が生じてしまいます。

口座の残高・各種支払いの確認

被相続人が亡くなったら、まずどの金融機関にどれだけの預貯金があるかを調べます。通帳は必ずしも最新の残高が記載されているとは限らないので、ATMなどで記帳しましょう。そして、口座が凍結される前に公共料金・クレジットカードの引き落としの有無を確認し、支払いの名義・口座の変更や解約をしておきます。そして、金融機関で口座の名義変更を行う際は、相続税の申告時に必要になる残高証明書を発行してもらいます。

生前贈与で可能な節税対策

また、存命中に預貯金の相続対策をしておくなら生前贈与を検討します。生前贈与は、相続税の節税対策の基本であり、なおかつ効果の高い方法です。贈与税は相続税より税率が高い代わりに、年間110万円の基礎控除や配偶者への贈与を優遇する制度などが設けられています。

生前贈与は元気なうちに

生前贈与で気をつけておきたいのは、相続開始前3年以内の贈与は相続税の課税対象となる点です。例えば、親の病気が悪化してこの先長くないかも…と気づいてから駆け込みで預貯金の生前贈与を行ったが、結局は相続税がかかってしまった、というケースもあります。お金の話題は身内でも切り出しづらいものですが、生前贈与は被相続人となる人が元気なうちに取り掛かるのがベストです。

預貯金の渡し方のポイント

生前贈与では、贈与者から受贈者へ預貯金を渡す方法にも注意点があります。まず、贈与の証拠が残るよう、現金手渡しではなく振り込みを利用します。数年かけて生前贈与を行う場合、毎年の贈与額は基礎控除の110万円以下に抑えていても、「預貯金を毎年○○万円ずつ10年かけて譲る」などの約束を交わしていれば「定期金に関する権利を贈与された」とみなされ贈与税がかかります。これを回避するには、振り込み金額を変えたり、時期や間隔をずらします。

預貯金の相続で損をしない、またはトラブルに見舞われないためには、存命中から少しずつ対策しておくことが大切です。家族だけで話しにくければ、遺産相続に強い弁護士など、専門知識のある第三者にサポートしてもらうことをおすすめします。

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