自用地の評価方法と相続税対策~相続した土地(不動産)はどうするのがベスト?~

相続した不動産(土地)

「土地は一物四価の商品」と言われる通り、土地には4通りの価格決定方法があります。その内、相続税の計算に使われるのは路線価と固定資産税評価額の2つです。相続した土地については、相続方法や売却時期によっては節税できることもあるので、効果的な相続税対策方法を知りたいときは遺産相続に強い弁護士や税理士に相談してみましょう。

自用地とは?

自用地とは、所有者以外の他人が利用する権利を持たない土地のことです。
この自用地という言葉は、相続税や贈与税の計算において課税対象となる土地を指して使われる言葉です。

簡単に言えば、居宅や駐車場など「自分で利用している土地」のことを指します。

ただし、自分が所有している土地を第三者に無償ないし相場に合わない明らかな格安な金額で貸し付けているケースでは、第三者が利用者だったとしても、自用地として扱われます。

相続した土地の評価を行う際は、まず自用地として評価を行い、貸宅地や借地権のある土地など、自用地以外の土地の場合は、その利用割合に応じて調整を行うことになります。

相続した土地の価格のつけ方は4通りあるって知っていますか?

被相続人から譲り受けた相続財産の中に、土地や建物などの不動産があることは珍しいことではありません。国税庁の調べによれば、平成26年に相続財産として申告された財産のうち、不動産は土地が41.5%、家屋が5.4%の約46%ありました。(※1)

土地は一物四価の商品

ふつう、物やサービスの値段は1つの物・サービスにつき1つしかありません。しかし、土地は値段のつけ方が4通りもあり、それぞれのつけ方により値段が多少変わることが大きな特徴となっています。

相続した土地の価格はどのように決まる?

土地の価格の決定方法には、次の4種類の方法があります。土地が一物四価の商品と言われる所以です。

価格の種類 説明 時価を1としたときの割合
売買取引時価(実勢価格) 実際に売買される金額のこと。 100%
公示価格 国土交通省の土地鑑定委員会が不動産鑑定士の評価を参考に毎年発表している価格。 90%
路線価 国税庁が示す土地の値段のこと。 70〜80%
固定資産税評価額 市町村(東京都23区内の場合は都税事務所)が示す土地の値段 60~70%

相続税の計算に使われる価格とは

このうち、相続税を計算する上で土地の評価をする際には、路線価と固定資産税評価額を使用します。相続や遺贈で取得した土地や建物に関するこれらの具体的な価格が知りたいときには、路線価は国税庁のHPの「路線価図・評価倍率表」で、固定資産税評価額はその土地のある市区町村役場の税務課に設置されている固定資産課税台帳で調べることができます。

相続税を計算するときの土地の評価方法とは?

相続や遺贈で取得した土地の評価額を計算するためには、「路線価方式」と「倍率方式」のどちらかの方法を使います。主に市街地にある土地・建物については路線価方式で、市街地から遠く離れた土地・建物については倍率方式で計算すると思っておけばほぼ間違いないでしょう。

土地の評価方法|路線価方式とは

路線価方式とは、路線価が定められている地域の土地の評価方法です。路線価が定められている土地全部がきれいな形をしているわけではなく、土地によって形状や立地状況は様々なので、評価額を計算する際には現況に沿って補正をかけることが必要となります。

路線価方式の計算方法

まず、固定資産税課税明細(納税通知書)や登記簿謄本で土地の面積の面積を調べます。そして、国税庁のHPにある「路線価図・評価倍率表」で1㎡あたりの路線価格(千円単位)を見てみましょう。路線価格がわかったら、面積と路線価格を乗じて評価額が算出されます。ただし、間口が狭い、2つの道路に挟まれているなどの事情がある場合は、奥行価格補正率、側方路線影響加算率、二方路線影響加算率などを加味して計算します。

ただし法的拘束力はない

市街地での土地や家屋は路線価方式で評価額を決定することが一般的ではありますが、法律上必ずしも路線価方式で評価を行う必要はありません。個人で土地家屋調査士などに依頼して測量してもらった上で評価額を算出してもよいとされています。ただし、その金額が正当なものであるかどうかはきちんと確認することが必要です。

土地の評価方法|倍率方式とは

倍率方式とは、路線価が決められていない地域で土地の評価額を計算する方法です。当該土地の固定資産税評価額に、一定の倍率を乗じて評価額を算出します。

倍率方式の計算方法とは

まず、固定資産税課税明細(納税通知書)で、被相続人が死亡した年の当該土地についての固定資産税評価額を調べます。次に国税庁HPにある「路線価図・評価倍率表」で定められている評価倍率を乗じて評価額を算出します。

倍率方式で土地を評価するときの注意点

倍率方式で土地の評価額を計算するときには、「基準年度」の固定資産税評価額を使って計算します。地域によっては、基準年度以外にも実勢価格に合わせて固定資産税評価額も下げることがあるからです。そうなると、正しい評価額が算出できなくなるため、必ず「基準年度」の固定資産税評価額を使用する必要があります。

土地の効果的な相続対策とは?

被相続人から土地や建物を相続・遺贈で取得した場合、当然ながら相続税がかかります。場所や土地・建物の現況によって相続税の評価額が変わりますが、少しでも節税するためにはどのような対策をすればよいのでしょうか。

土地を分割する

被相続人の所有していた土地を共同相続人で分割して相続することで、評価額を下げられる可能性があります。具体的な数字を通してどれほど節税効果があるのか見ていきましょう。

分割して相続すると評価額はどうなる?

たとえば、2本の道路に挟まれていた土地であれば、土地を真ん中で分割すると、それぞれの土地に接している道路は1本ずつになり、二方路線の加算がなくなります。2本の道路の路線価をそれぞれ50万円/㎡、30万円/㎡、土地の大きさを200㎡、二方路線影響加算率を0.02とすると、単独で取得した場合と分割して取得した場合とで評価額に以下のような差が出ます。

単独で取得した場合

( 50万円 + 30万円 × 0.02 ) × 200㎡ = 1億120万円

二人で取得した場合

50万円 × 100 = 5000万円
30万円 × 100 = 3000万円
計:8000万円

狭い土地では避けた方がよい

なお、狭小な土地については、無理やり分割するのは避けた方がよいでしょう。明らかに相続税を回避するための策とみなされ、税務上否認されることがあります。

相続した土地や建物を売却するなら

相続税を納付するための準備として、相続・遺贈された土地や建物を売却して現金化する必要に迫られることもあります。せっかく売却するのであれば、少しでもお得になる方法で行いましょう。

相続した土地を共有名義にしておく

家やその土地を譲渡すると、居住用財産の3000万円の特別控除を受けることが可能です。そこで、売却前に家やその土地を共有名義にしておくと、一定の要件を満たせばそれぞれの名義人に3000万円の特別控除が適用されることになります。

相続した土地を申告期限後3年以内に譲渡する

相続や遺贈で取得した土地を売却するのは、申告期限から3年以内が望ましいとされています。それは、取得費の加算の特例を受けられて、その人の相続税額のうち相続した土地などに対応する金額を譲渡所得の計算上の「取得費」に加算することができます。

5年以内の譲渡には要注意!

相続人が土地を取得した年から5年以内に売却することを「短期譲渡」、5年以上間を空けて売却することを「長期譲渡」と言います。土地を売却すると、売却金額して得られた所得に所得税と住民税がかかります。長期譲渡の場合にかかる税金は所得税が15%・住民税が5%の計20%であるのに対し、短期譲渡の場合は所得税が30%・住民税が9%となります。このように、長期譲渡と短期譲渡ではかかってくる税金の額が大幅に変わってくるため、売却のタイミングには注意しましょう。

※1:国税庁「平成26年分の相続税の申告状況について」

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