相続人調査の進め方 戸籍を集める方法と漏れなく読み解くコツ

戸籍

相続人調査とは、相続が発生した際に必ず必要な手続きです。

「相続人調査はあくまで形式的なもので、我が家では相続人調査など不要だ」と誤解されている方もいますが、実際は相続の正しい流れを証明する実務として相続人調査は必要で、相続人調査を行うことで故人とつながった相続人が想定外に出てくるケースもよくあります。

本記事では、相続人調査の意義や具体的な方法などを解説します。

相続人調査とは

相続人調査とは、相続が発生した際、法定相続人は誰なのかを確定・証明するために戸籍を収集することです。

相続人調査はなぜ必要?

相続人調査は、故人の財産を受け継ぐ法定相続人を確定させる非常に重要な手続きで、遺産分割協議を行うには欠かせません。

というのも、遺産分割協議は、法定相続人全員で行わなければ無効となってしまうためです。

遺産分割協議は相続人全員で行わなければならない

遺産分割協議は相続人全員で行うのが原則です。
遺産分割協議による遺産分割が認められるのは、相続人全員が合意していることを前提としています。1人でも参加していない相続人がいる場合、その遺産分割協議による決定は無効となります。

実は、相続人調査をしないで内輪の家族だけを法定相続人と勘違いしたまま遺産分割協議を行ってしまうケースは少なくありません。
また、相続人調査の結果、想定外の人物が法定相続人だとわかることはよくあります。例としては、故人の男性が配偶者とは別の女性との間にもうけていた隠し子、残された遺族と交流のない離婚した前妻との間の子などが挙げられます。

相続の手続きで戸籍が必要になる

また、相続手続きの実務でも、金融機関や法務局、税務署等から相続関係を客観的に証明する資料として、被相続人の出生から死亡までの戸籍、および相続人全員分の最新の戸籍が求められます。

具体的には

  • 相続した預貯金の引き出し
  • 不動産や有価証券等の名義変更
  • 相続税申告

などの手続きで、戸籍の提出が必要となります。

取得した戸籍謄本は、ただ相続人の確かめとして内容を確認するだけではなく、相続の実務で相続関係を確認する資料・提出物として必要になるのです。

相続人調査で実際にやるのは戸籍収集

実際の相続人調査では、法定相続人を確定・証明する資料として戸籍を収集していくことになります。
戸籍収集の流れを説明する前に、この戸籍とはそもそもどういうものなのかを確認していきましょう。

戸籍の種類

戸籍には3つの種類があります。順に見ていきましょう。

戸籍謄本

戸籍謄本とは、戸籍に記載されている全員の戸籍上の届出内容が記載されたものの写しです。
具体的には、

  • 名前
  • 生年月日
  • 父母の名前
  • 続柄
  • 配偶者区分(夫または妻)
  • 身分事項(出生・死亡の日時・土地、婚姻日など)

等が記載されています。

かつて戸籍は手書きの紙で作成・保存されていました。そのため、中には癖字で書かれていたり、古いものは旧字体で書かれていたりするなど、判読が難しいものもありました。
平成6年(1994年)の戸籍法改正以降、段階的に戸籍はコンピュータ化が進められ、令和2年(2020年)9月28日御蔵島村の電算化をもって全国すべての市町村の戸籍のコンピュータ化が完了しました。

このコンピュータ化された戸籍の謄本は「全部事項証明書」と言いますが、こうした経緯から、市区町村の役場窓口では戸籍謄本の呼び方でも話が通じるのが通常です。

戸籍抄本

なお、戸籍謄本に似たものに戸籍抄本があります。

戸籍抄本とは、戸籍に記載されている人の1人または一部の人の情報が記載されたものを指します。
平成6年以降のコンピュータ化された戸籍の抄本は「個人事項証明書」と言います。

戸籍謄本 戸籍の原本をそのまま写したもので、戸籍に記載されていることがすべてわかります。
戸籍抄本 戸籍の原本の一部を抜き出したもので、個人の確認に使うケースが多いものです。

また、戸籍と関連した用語で除籍・転籍・改製という言葉があるので、それぞれ解説しておきます。

除籍

結婚、死亡などで戸籍から抜けることを除籍といいます。また、結婚や死亡、他の市区町村に本籍地を移す(転籍)などで戸籍内の全員が抜けるとその戸籍は除籍扱いとなり、その写しを「除籍謄本」といいます。

転籍

実家を出て違う地域で家庭を持つ場合、本籍地を現住所に移す場合があります。これを「転籍」といいます。

改製

戸籍は法改製によって今までに何度か作り直されています。
例えば昭和32年に戸籍制度が改製され、家単位から家族単位に改製。平成6年に戸籍事務がコンピュータ化されて改製されています。

三代戸籍禁止の原則

戸籍には「三代戸籍禁止の原則」というルールがあります。これは親、子、孫の三代は同じ戸籍に記載できないというものです。
例えばAさんに長男Bさんが生まれると、Aさんの戸籍に入ります。
Bさんが結婚(婚姻届を提出)したら、Aさんの戸籍からは抜けます。これを「除籍」と言います。
そして、Bさんは新たな戸籍の筆頭者になります。

Bさんに子どもCちゃんが生まれたら、CちゃんはBさんの戸籍に記載されます。

では、シングルマザー(未婚の女性が出産した場合)はどうなるでしょうか?
Dさんという女性は親と同居していましたが、婚姻関係にない男性との間に子どもが生まれました。男性とは結婚せずに育てることにしました。
この場合も親子三代が同じ戸籍に入れないために、Dさんは親の戸籍から抜けて、新たな戸籍の筆頭者となります。そして、そこに生まれた子どもが入ることになります。

除籍謄本

除籍謄本とは、戸籍の中に入っている人全員が、結婚や死亡などで戸籍から除かれた(いなくなった)状態の戸籍(除籍)の写し(謄本)です。
遺産相続や、相続する不動産等の名義変更などの手続きで、被相続人が亡くなったことの証明として除籍謄本が必要となる場合があります。

なお、相続手続きの実務では、被相続人の死亡が記載されている戸籍謄本のことを指して除籍謄本と呼ぶ場合もあります。
「亡くなった方の除籍謄本をご提出ください」などと求められた場合は、本来の意味の除籍謄本が必要なのか、被相続人の死亡が記載された戸籍謄本が必要なのか、事前に確認しておきましょう。

原戸籍(改製原戸籍)

原戸籍(改製原戸籍)とは、コンピュータ化や法改正により、戸籍が新しく作り直される(改製される)前の古い戸籍のことです。
実務上は「はらこせき(かいせいはらこせき)」と呼びます。これは、「現戸籍(現在生きている戸籍)」と用語を混同しないためです。

原戸籍(改製原戸籍)は、戸籍法の改正に伴って存在するもので、現在は、戸籍を辿っていくことで平成6年の法改正による平成改製原戸籍、昭和22年の法改正による昭和改製原戸籍が必要となるケースがあります。

戸籍の改製で相続人を確認できなくなるケースも

なお、戸籍の改製前にすでに結婚や死亡等により除籍となった人は、改製後の戸籍に記載されません。
そのため、たとえば被相続人の原戸籍上に亡くなった親族が載っていた場合、その親族の子などが相続権を持っている可能性がありますが、現戸籍ではその親族の子の存在を把握することができません。
現行の戸籍謄本だけでは、すべての相続人を確認できない可能性があるのです。

被相続人の戸籍を辿り必要な場合は、改製前の戸籍である「原戸籍(改製原戸籍)」も含めて確認していくことが大切です。

相続人の確定には戸籍謄本を使う

先程ご紹介した通り、戸籍というと戸籍謄本と戸籍抄本、呼び方の似た2つがありますが、相続人の確定に必要となるのは戸籍謄本の方です。

相続人の確定では、亡くなった方と相続人のつながりを全て確認する必要があります。
戸籍謄本には、戸籍に記載されている全員の情報が記載されているので、相続人とのつながりが一目瞭然にわかります。
一方で、戸籍抄本には、戸籍に記載されている人のうち1人あるいは指定した数人だけの情報しか記載されません。戸籍内の全員を確認できないため、戸籍抄本では相続人の確定に使用するには不十分なのです。

相続人調査の手順と進め方

相続人調査は、以下の手順で進めていきます。

  1. 相続人の範囲・順位を確認する
  2. 故人(被相続人)の生まれて死ぬまですべての戸籍謄本を取得する
  3. 相続人全員の戸籍謄本を取得する
  4. 戸籍の中に知らない相続人がいた場合
  5. 相続関係説明図(相続関係相関図)を作成する

相続人の範囲・順位を確認する

最初に、法定相続人の範囲と順位を理解したうえで、誰が法定相続人になるのか確認します。

配偶者は常に法定相続人になる

まず配偶者は常に法定相続人となります。

配偶者以外の親族は相続順位で決まる

配偶者以外の親族は、以下の順位で法定相続人となります。

  1. 第1順位:子ども(直系卑属)
  2. 第2順位:親(直系尊属)
  3. 第3順位:兄弟姉妹

故人に子どもがいる場合は、第1順位である子どもが法定相続人になります。
子どもが亡くなっている場合は孫、子どもも孫も亡くなっている場合はひ孫と、故人に一番近い直系卑属が法定相続人になります。
なお、孫やひ孫以降が代わりに相続することを代襲相続と言います。

子ども等の直系卑属がいない場合は第2順位の親が相続します。こちらも親が亡くなっている場合は祖父母、親も祖父母も亡くなっている場合は曽祖父母など直系尊属が法定相続人になります。

もし第1順位の子ども(直系卑属)も第2順位の親(直系尊属)もいない場合は、第3順位の兄弟姉妹が、兄弟姉妹も亡くなっている場合は甥姪が法定相続人となります。
法定相続人となるのは甥姪までで、甥姪の子ども以下の親族が相続人になることはありません。

故人(被相続人)の生まれて死ぬまですべての戸籍謄本を取得する

故人(被相続人)の死亡が記載された戸籍謄本を取得し、その戸籍謄本から古い戸籍を順々にさかのぼり、故人(被相続人)の出生から死亡まで、すべての戸籍謄本を連続して取得します。
戸籍の内容によっては、戸籍謄本ではなく除籍謄本や改製原戸籍の取得が必要となる場合もあります。

故人(被相続人)に子どもがいる場合、戸籍謄本には、相続人となる子どもの名前が記載されています。
ただし、戸籍は転籍や婚姻、離婚、養子縁組、改製ごとに新しく作り直されます。
現戸籍以前に子どもが婚姻・離婚・死別等により戸籍から離脱していた場合、その子の存在を把握できない場合があるため、故人(被相続人)については、生まれてから死ぬまで人生すべての戸籍謄本を取得しなければなりません。

戸籍の取得漏れがあると、法定相続人の見逃しにもつながります。
遺産分割時に不在だった法定相続人が後から見つかった場合、相続手続きはやり直しとなってしまうため、被相続人の戸籍収集は漏れが出ないよう十分な注意が必要です。

戸籍謄本の読み解き方

実際に戸籍謄本を集めていくにはどのように当たっていけばよいのでしょうか。ここで、取得した戸籍謄本を読み解き、集めていく際の流れを見ていきましょう。

  1. 死亡時の戸籍謄本を取得する
  2. 戸籍の有効期間の確認
  3. 前の戸籍があるか
  4. 相続人となる人物の確認
死亡時の戸籍謄本を取得する

まずは、被相続人(故人)が亡くなったタイミングの戸籍謄本を取得します。
戸籍謄本を漏れなく取得していくには、故人がなくなった時点の戸籍謄本から、後ろに遡って戸籍を収集していくのが基本です。

戸籍の有効期間の確認

戸籍を取得したら、戸籍の作成年月日と有効期間を確認しましょう。
新たな戸籍を作成することを「編製」と言います。戸籍謄本の戸籍事項欄に「編製日」が書いてありますので、それがその戸籍の作成年月日です。

ただし、戸籍に編製年月日が記載されたのは昭和23年以降のもののみです。昭和23年以前の戸籍には編製年月日が記載されていません。
取得した戸籍に編製年月日の記載がない場合は、「戸主の事項欄」に記載される編製原因(戸籍が新しく作られることになる原因)を確認すると、編成原因が発生した日付=編成日が確認できます。

前の戸籍があるか

次に、前の戸籍の有無を確認します。
「従前戸籍」欄には、この戸籍に入る一つ前の戸籍の本籍地が記載されています。その本籍地の市区町村役場から前の戸籍を取得します。

この要領で本籍地からの戸籍取得を繰り返し、被相続人の出生の戸籍まで辿っていきます。

相続人となる人物の確認

「身分事項」欄を見ると、

  • 出生
  • 婚姻
  • 離婚
  • 養子縁組
  • 死亡

などの項目が記載されています。

出生や養子縁組などの項目をあたっていくことで、相続人となる人物を確認できます。

相続人全員の戸籍謄本を取得する

被相続人の戸籍を取得し、相続人の確認が取れたら、相続人全員の戸籍取得に移ります。
相続人全員の戸籍謄本を取得するには、相続人本人もしくは各人の家族に依頼して進めるのが効率的です。

ただし、故人の死亡が記載されている戸籍謄本に含まれている相続人については、故人の戸籍で相続関係が確認を取れるため、別途の戸籍謄本取得は不要です。
故人の死亡時の戸籍に記載がない相続人の分は、故人の戸籍謄本を通じてその相続人の本籍地を追い、たどり着いた本籍地をあたっていき、現在の戸籍謄本を取得します。

なお、故人に子がいる場合といない場合とでは相続人が変わります。
それぞれのケースで、誰の戸籍謄本を取得すればいいかを見ていきましょう。

故人に子がいる場合

故人に子がいる場合、相続人第1順位の子のみが法定相続人、あるいは故人の配偶者と子が法定相続人になります。
そのため、子の現在の戸籍謄本を取得します。

もし子が故人よりも先に亡くなっていた場合は、孫が相続人になります。
孫の存在について確認する必要があるため、亡くなった子の生まれてから死ぬまで連続したすべての戸籍を確認します。

故人に子がいない場合

故人に子がいない場合は、故人の配偶者のみ、あるいは故人の配偶者と相続人第2順位の親が法定相続人です。

配偶者については故人の戸籍に載っているはずなので、別途の戸籍の準備は不要です。
親が法定相続人となる場合は、現在の戸籍謄本を取得します。

もし親が故人よりも先に亡くなり、祖父母が存命の場合は、祖父母が相続人になります。
祖父母の存在について確認する必要があることから、亡くなった親の生まれてから死ぬまでの連続したすべての戸籍を確認します。

故人の親、祖父母などの直系尊属が全員亡くなっている場合は、故人の相続人第3順位の兄弟姉妹が法定相続人となります。
このケースでは、兄弟姉妹全員の現在の戸籍謄本を取得します。

戸籍の中に知らない相続人がいた場合

戸籍収集の過程で、知らない相続人が出てくるケースがあります。具体的には、養子や婚外子、異父兄弟、異母兄弟などに相続の権利が渡る可能性が考えられます。

相続人の戸籍の附票で住所を確認できる

戸籍を確認する中で知らない相続人がいた場合は、戸籍の附票を取得しましょう。
戸籍の附票とは、新しく戸籍を作成して以降の住民票の移り変わりを記録したもので、戸籍とともに本籍地の市区町村役場で保管されています。

知らない相続人が載っている戸籍の附票を確認することで、相手の住所が確認できます。

連絡を取り相続の事実を伝え対応を話し合う

戸籍の附票で住所が確認できたら、相手に手紙を送るなどして連絡を取ります。
新たに見つかった相続人に相続が発生した事実を伝え、今後の対応について話し合います。

相続関係説明図(相続関係相関図)を作成する

相続人が確定したら、相続関係説明図(相続関係相関図)を作成しましょう。
相続関係説明図(相続関係相関図)とは、故人と相続人との関係を整理した家系図のような図面で、各相続人の名前、生年月日、続柄、住所などを記載します。

相続関係説明図(相続関係相関図)は必ず作成しなければならないものではありませんが、作成することで複雑な相続関係をわかりやすく可視化できます。

相続手続きの際、戸籍謄本と合わせて提出することで、相続関係説明図を戸籍謄本のコピーの替わりとして受領してもらい、戸籍謄本の原本を還付してもらうことができます。

戸籍謄本の準備コストの節約にも有効

相続手続きでは大量の戸籍謄本が必要となることも少なくなく、戸籍の提出を求められる度に発行するのは手間も費用もかさみます。
相続関係説明図を準備することで相続関係の確認をスムーズにしつつ、戸籍謄本原本の発行にかかる費用(あるいは原本を複写するコピー代)の節約にもつながります。

相続人調査にかかる費用

相続人調査には、費用がかかります。
自分で行う場合と弁護士などの専門家に依頼する場合とそれぞれの費用の目安は以下のとおりです。

自分で行う場合

相続人調査を自分で行う場合に必要なのは、戸籍謄本等(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍)の発行費用と、郵送で取り寄せる場合は往復の郵送料のみです。

戸籍謄本は1通450円、除籍謄本および改製原戸籍謄本は1通750円で取得できます。
郵送料は定形郵便物の場合、2023年現在、往復で最低168円(84円×2)です。※2024年秋に実施が検討されている郵便料金値上げが行われた場合、最低220円(110円x2)となる見込みです。

故人(被相続人)の戸籍謄本等(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本)は、生まれてから死ぬまでを揃えて合計4通程度になるのが一般的です。
一方、故人(被相続人)が

  • 結婚や転籍の回数が多い
  • 養子に入っていた
  • 親が分家した

など特殊なケースでは、戸籍謄本等を合計10通以上そろえることになる場合もあります。

これら故人(被相続人)の戸籍謄本等に加え、相続人の戸籍謄本等も取得すると、トータルの費用は最低で3000円程度~高額なケースで1万円超程度が相場となります。

弁護士などの専門家に依頼する場合

弁護士などの専門家に依頼した場合、相続人調査は以下の作業とセットで料金設定されていることが多く、費用は合計で10万円~30万円程度が相場です。

  • 相続財産調査(不動産、預貯金等)
  • 財産目録の作成
  • 公正証書遺言の有無の調査
  • 相続関係説明図(相続関係相関図)の作成

金額に幅があるのは、弁護士報酬は自由化されており弁護士によって費用が異なること、また、相続関係の複雑さや相続人の人数、相続財産の過多によって作業の手間が変わってくるためです。

なお、相続人調査だけを依頼する場合の費用は、3〜5万円程度が相場です。
もっとも、相続人の人数が多い場合「相続人数6名以上は1名あたり追加料金5,000円」などと追加料金が発生する場合もあります。

相続人調査のポイント

相続人調査は、ただやみくもに戸籍を揃えれば良いというものではありません。
以下に上げるような、相続人調査で押さえておくべきポイントをよく理解した上で対応していく必要があります。

相続人調査の誤りは手続きやり直しのリスク

相続人調査に誤りがあると、相続手続きは最初からやり直しになります。

遺産分割協議は法定相続人全員で行うことが必須条件で、一人でも欠けた状態で行った遺産分割協議は無効となるためです。
相続手続きの一番最初の大前提となる手続きだからこそ、誤りが許されません。
確実な調査が求められるのが相続人調査の手続きです。

戸籍謄本を取得してみて対応が増えるケースがある

いざ戸籍謄本を取得する過程で、養子や婚外子など想定外の相続人が出てくるケースは少なくありません。

相続人が新たに見つかった場合、連絡を取ったことがない相手でも、戸籍の附票から住所を割り出し連絡を取るなどの対応が必要です。

「相続人の範囲なんて当然わかっているから、わざわざ調べる必要はない」と考える方もいますが、実際は相続人を確定させるための相続人調査なので、絶対に欠かすことはできない手続きです。

令和6年戸籍法改正による相続人調査の変更点

相続人調査は、令和6年3月1日施行の戸籍法改正により、改正前と改正後でいくつかの変更点が出てきます。

故人の戸籍謄本を最寄りの市区町村役場でまとめて取得できるように

改正前は、ケースによっては故人(被相続人)の戸籍謄本を複数の市区町村役場からそれぞれ取得する必要があり、相続人自身が相続人調査を行うのは手間と時間がかかるという課題がありました。

一方で改正後は、戸籍謄本の広域交付制度の導入により、故人(被相続人)の戸籍謄本を、一定の条件のもと相続人自身が最寄りの市区町村役場でまとめて取得できるようになり利便性が上がります(一定の条件については後述します)。

改正前も改正後も弁護士に依頼した方が穏便

ですが、改正前も改正後も、弁護士などの専門家に相続人調査を依頼したほうが穏便に済む点は変わりません。

その理由は次のとおりです。

改正前に弁護士に依頼するメリット

まず、改正前に弁護士などの専門家に依頼するには、以下のメリットがあります。

  1. 戸籍謄本の取得を代行してくれるので、相続人は手間がかからない
  2. 手書きされ判読が難しい古い戸籍謄本も、確実に解読してくれる
  3. 相続関係が複雑なケースでも、漏れなく相続人確定をしてくれる

相続手続きに精通している弁護士にとっては、戸籍謄本の取得と、そこからの相続関係の判断・確定は手続きのうちの一連のフローです。
相続に関わる知識もなければ、多くの戸籍謄本を取り寄せる機会もない素人と比べれば、ずっとスムーズで確実な相続人調査が期待できます。

改正後に弁護士に依頼するメリット

改正後に弁護士などの専門家に依頼するメリットとしては、前述の

  • 2.手書きされ判読が難しい古い戸籍謄本も、確実に解読してくれる
  • 3.相続関係が複雑なケースでも、正しく相続人確定をしてくれる

については改正後も同じようにメリットです。

戸籍謄本の広域交付制度の利用には条件がある

1.の戸籍謄本の取得代行については、改正後は広域交付制度によって、相続人自身が最寄りの市区町村役場でまとめて戸籍謄本を取得できます。
そうすると、もう弁護士に相談するメリットにはならないのでは?と思う方もいるかもしれませんが、そう決めて考えてしまうのは少々早計です。

広域交付制度の利用には条件があり、以下が利用できる対象となります。

  • コンピュータ化された戸籍謄本、除籍謄本である
  • 本人、配偶者、直系尊属(父母や祖父母等)、直系卑属(子や孫等)のものである
  • 取得には本人が市区町村役場の窓口に行かねばならない

つまり、コンピュータ化されていない戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍は対象外なので、平成6年以前の平成改製原戸籍を含むケースでは、広域交付制度を利用することはできません。
また、故人(被相続人)が自分から見て兄弟姉妹やおじ、おばにあたる場合は対象外となり、第3順位を含む相続は広域交付制度で対応できません。
また、市区町村役場の窓口に行く時間がない人が郵送請求することも認められません。

このように実際の利用時を考えると広域交付制度も決して万能なものではなく、改正後も、弁護士などの専門家に依頼して任せた方がスムーズというメリットは変わりません。

まとめ

相続人調査は弁護士に相談を

相続人調査は、遺産分割協議を有効に行い、預貯金の引き出し等の相続手続きを進めるために、漏れなく確実に行う必要があります。

相続人調査で課題となるのは、戸籍収集に手間と時間がかかること、正確に戸籍を解読し相続人を確定するには専門知識が必要なことの2点です。
この2点をクリアできれば、相続人調査を自分で行うのは不可能ではありません。

ですが、先に述べた通り、相続人調査を誤ると遺産分割協議を含め相続手続きの全てがやり直しになるリスクがあります。
こうしたリスクを考えると、相続人調査は相続問題に詳しい弁護士に相談するのが得策です。

弁護士であれば、戸籍収集を代理で行ってくれますし、戸籍を解読し確実に相続人確定を行ってくれます。
相続人調査でお悩みの場合には、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

遺産相続に強く評判の良い弁護士事務所を探す

遺産相続

相続問題で悩みを抱えていませんか

  • 相手がすでに弁護士に依頼している
  • 遺産分割の話し合いがまとまらない
  • 遺産を使い込まれているがどうすれば?